化学記事
クロスカップリング反応は、遷移金属触媒(主にパラジウム)を用いて二つの有機分子を炭素–炭素結合で連結する反応です。 2010年にHeck、根岸英一、鈴木章の3名がノーベル化学賞を受賞し、医薬・農薬・材料科学における重要性が広く認知されました。
主要なクロスカップリング反応:
- Suzuki–Miyaura カップリング: アリールボロン酸と有機ハライドのカップリング。 水系溶媒でも進行し、官能基許容性が高い。製薬企業で最も頻用される C–C 結合形成反応。
- Negishi カップリング: 有機亜鉛試薬を用いる。高活性・高選択性で、 sp³–sp² カップリングにも適用可能。
- Heck 反応: アリールハライドとアルケンの C–H/C–X 結合交換。 β-水素脱離を経由して新たなアルケンを与える。
- Buchwald–Hartwig アミノ化: アリールハライドとアミンのカップリングで アリールアミン合成。医薬品合成の重要基盤反応。
- C–H 活性化カップリング: 近年急速に発展。予め官能基化せず直接 C–H 結合を切断。 廃棄物削減・工程短縮に貢献。
反応機構(Pd 触媒の例):
酸化的付加(Pd⁰ → PdⅡ) → トランスメタル化 → 還元的脱離(PdⅡ → Pd⁰)の 3 段階サイクル。 配位子設計(BrettPhos、SPhos など嵩高い Buchwald 配位子)によって電子的・立体的チューニングが可能。
参考: Nicolaou, K. C. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 4442–4489. / Johansson Seechurn, C. C. C. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 5062–5085.